エンデュランスの世界 その③ 実戦編
こんにちは。去年の10月のブログでもご紹介した「エンデュランス競技」を取材して来ました!
2019年1月18日(金)~19日(土)の2日間、静岡県伊東市で『伊豆パノラマ・ライド 2019年1月大会』が開催されました。今までクレインの参加者は、東日本にあるクラブからの参加がほとんどでしたが、今回は東広島、金沢、大阪、服部と、西日本からも新メンバーが合流。2019年は、いつもより賑やかな新シーズの幕開けになりました。
では、競技の様子をお伝えしていたします。
≪前日≫
他の馬術競技との大きな違いの1つが、競技前日にあるブリーフィング(打ち合わせ会)の、数時間前に実施されるホースインスペクション(獣医検査)です。馬場馬術の大きな国際大会では競技前に実施されることもあるそうですが、エンデュランス競技は、まさにココからがスタート。緊張した面持ちの人馬が、まるでお披露目会のように大会参加者の前を速歩していきます。パスした馬のお尻には、距離種目毎のカラーリングでナンバーがペイントされます。
写真 左 初めての選手もいるのでホースインスペクションの練習。
写真 左から
・前日の馴致風景。クレインチームとして新旧メンバーでサポートしながら馴致中。
・ライダーとクルー2名分のカラーゼッケン(ビブス)配布。ビブスを着ていない人は馬に触ることができません。
・ビブスの番号が馬のお尻にもペイントされチームがわかります。
【当日】
明け方5時前には馬の朝ご飯。まだ暗いうちからの活動なのですが、競技場の中に宿泊施設も完備されているため、選手・クルーにとっては嬉しい立地条件です。今回の最長クラス「80km競技」は午前7時スタート。まさに海から朝日が上がってくる姿を望みながら人馬が走り出しました。
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伊豆ホースカントリーのコースはいくつかのエリアにわかれています。
パノラマコース(全長約1km)、15kmコース、23kmコース、マウンテンコース。これらのコースを合わせて区間("レグ"といいます。)毎の距離が20km、30kmになっています。
(ルールについてはコチラを→「エンデュランスの世界 その② ルール編 」https://www.uma-crane.com/happy-crane/2018/11/post-278.html)
ただし、選手と馬たちの姿が見えるのはパノラマコースだけ。例えば「80km競技」の場合、スタートしてパノラマコースを2周走った後は、2時間ほど選手の姿が見えなくなります。その声援のない区間は、参加選手同士で並走し、声を掛け合いながら孤独にならない(!?)作戦を立てるそうです。
そんな特殊な環境のせいなのか、他の馬術種目、いえ恐らく他のスポーツではあまり聞かない、あることが許されています。それは携帯電話の使用です!競技中にクルーと選手が、あるいは選手が大会本部と電話で話してもOKなのです。前日のブリーフィングでも、「道に迷って困ったら電話して来てね」(笑)と主催者の方が伝えておりました。携帯電話の使用が可能ということで、「音楽を聴きながらの走行も良いのですか?」と聞いたら「ダメでは無いですよね。」と、とても緩やかな回答をいただきました。
その後も、競技毎に続々と人馬がスタートしていきます。
8時51分、「80km競技」の先頭を走る遠藤選手&ソニアが、第1区間の30kmを走り終え帰ってきました。海外(インスタなどでイギリスからの報告をご紹介しました)から帰国して即、この大会のために、馬の輸送で西へ東へと奔走した遠藤選手。その走行距離に比べたら80kmなど大したことない! そんな雰囲気の序盤の30kmです。
鞍を外し、厩舎に戻って馬の心拍を落ち着かせます。夏なら水で馬の全身を洗ったり、汗を止めたりと、クルーが必死に馬のケアをするところですが、気温10℃の今大会ではゆっくり休ませることに専念。到着後は、10分程で獣医チェック。パスすると強制的に40分の休みを取ることが必要になります。
つかの間の休息。クルーもそっと距離を置いて遠藤選手とソニア、2人時間がひっそりと流れていました・・・。
残りの第2区間(30km)、第3区間(20km)を合わせ、合計80kmを無事に走破して帰って来た遠藤選手&ソニア。朝の7時にスタートし、ゴールした時刻は、お昼を過ぎた2時23分。
序盤‐中盤の60kmまでは笑顔もあった遠藤選手でしたが、終盤の20kmでは、ちょっと顔にも疲労の色が・・・。馬の体力も維持しなければならないので、ゴール直前のパノラマエリアでは馬から降りて引っ張って歩くシーンも見られました。さすがにゴール後は声も出せず、ひと廻りカラダが小さくなったように見えた遠藤選手。お疲れ様でした!
最後のインスペクションも無事にパスし、トータル走行時間5時間53分で優勝となりました!
長距離の激闘を終えた、遠藤選手&ソニア、それを支えたクルーの皆さまに大きな拍手を送ります。
その後も続々と人馬が帰って来ました。その度にあわただしくなるゴール地点。ここからのクルーの皆様のチームワークが素晴らしいです。鞍をはずす人、馬を引く人。最終関門である獣医検査をパスするために各チーム、馬のケアに余念がありません。まさしく「馬」を中心に、選手・クルーのチームで戦うエンデュランス。人馬一体を目指す競技のクライマックスを目にしました。
写真左から
・ご飯待ちの与那国馬チーム。この真横を馬と選手は駆け抜けていきました。
・空は近く、相模湾も富士山も見渡せる伊豆ホースカントリー。海に沈む夕日がとても魅力的でした。
残念ながら今回参加した人馬の中には、ゴールは切ったものの獣医検査でパスできなかった馬もいました。リベンジを目指し、人馬共に心肺機能を高めるトレーニングを積んでいるのだろうと思います。
まだまだ知らない方も多いこの競技。馬をパートナーに大自然を進み、選手とクルーが力を合わせ1頭の馬に集中する。他の競技と一味違うエンデュランスの魅力はたくさんあります。これからも、いろんな情報をお届けできればと思います。お楽しみに!